軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

TMS1973年12月号を読む

毎月20〜21日は鉄道模型雑誌の発売日。という訳で「鉄道模型趣味」(TMS)誌の12月号を買ってきました。
さっそく12月号を読んでみましたが、関水金属から9ミリゲージのD51が出るのですね。16番では中村精密からC12、トビー模型店からC11が出るのですな。そしてダックスストーリーがついに最終回です・・・
・・・あれれ、これは12月号は12月号でも、35年前の1973年12月号ではありませんか! 何で間違えたのでしょう?
というわけで、今を去る事35年前の、1973年12月(通巻306)号を見ていきたいと思います。
★表紙は土屋氏による16番作品の阪急、近鉄、京阪が並んでいる写真ですが、実は中の記事に掲載されている訳ではありません。この頃のTMSにはこの手の「本文とは関係ありません」表紙が結構あったような気がします。それはさておき、今でこそNゲージのプラ量産品でさえ私鉄電車がガンガン発売されていますが、この当時は16番ですら私鉄電車の製品なんてピノチオの東急5000や京急1000(この年に発売された)位。あとはロコモデルのペーパー製品位しかなかった時代ですので、この表紙写真が夢のような光景に思えた少年もいたかもしれません。
★この年(1973年)1年間に渡って連載された「the DACHS STORY」はこの12月号で最終回。「システムレイアウトに向かって」として、レイアウトセクション「終端の貯木場」(サイズ:1200x300mm)が掲載されています。これをアレンジしたのが、先日の軽便鉄道模型祭で展示された畑中シェフのDach's Story 2008モジュールです。
軽便祭への道・2008
巻末の「編集者の手帖」ではやま氏(山崎喜陽主筆)がダックスストーリーについて

アンケートの結果でも、良いにつけ悪いにつけ上位の関心を示している点は成功と思うが、○よりも×の方がいくらか多いのである。そして、その内の大部分は文章や発表方法への反撥を示しているようだ

と記しています。そしてダックスストーリーについての感想や意見の募集が記されており、これが「DACH'Sを考える」として1974年4月号に掲載されることになります。
最後に87分署メンバー全員による後書きがありますが、その中で長門技術部長はこう書かれています。

私にはこの雑誌の彼方のうるさい批評家達の声が聞こえてくるようです。「なんだ、こんな記事ぜんぜんおもしろくないじゃないか」。でも我々は行動を起こしたのです。起爆剤はセットされたのです。

この2年後、87分署の活動の延長として乗工社が設立され、コッペルを皮切りに多数のナローゲージ製品がリリースされ、ナローゲージモデルが日本に定着する事となります。また、この後に模型界で活躍するファンや、雑誌・メーカー関連の方にもダックスストーリーや87分署に直接・間接に影響を受けた方が数多くおられます。この当時は「ダックス」は必ずしも好評だったとは言えなかったかも知れませんが、今にして思えば強力な起爆剤であったのです。
★山崎主筆による「ミキスト」では前号に引き続いてロンドンの模型店とイギリスの模型用部品の話題。ロムフォード製とハンブリング製の蒸機用動輪や、イギリスのキット事情について紹介しています。動輪は完成品やキットの動輪パーツを分売しているのと異なり、自作ファン向けに汎用的に使える部品として販売されている物ですが、日本でもこういうパーツが欲しいですなぁ・・・と、35年経っても言わなければならないのは悲しいですな。近年は小ロット・マイナーな製品も多いのですから、こういうパーツを作って各メーカーへのOEM供給も積極的に行えば利益も上がるんじゃないでしょうか?
山崎主筆はイギリスのキット事情にも触れ、日本のキットと異なりバラキットである事や、「一度出たカツミのC12バラキットあたりを考えてもよいが」等、どういうものであるかを具体的に説明しています。この頃は日本ではキットといえば未塗装キットか塗装済キットの事であり、バラキットというのは一般化していなかったのです。カツミのC12バラキットも、実は組立する人手不足*1でバラキットとして発売したという事情があったようです。(参考:ノーブルジョーカーのホームページ/60年代の鉄道模型(3)

★12ページは珊瑚模型店の広告で、近日発売のEF53が掲載。その横に「朝顔型カプラー(1組200円)」と「朝顔型ドローバー(2個・ネジ付100円)」が写真入で掲載されています。
★35ページにはこの年に開店したばかりのエコーモデルの広告。「実感派マニアのための新しいタイプの店!」とのキャッチフレーズがついています。この頃はまだ1/4ページのスペースです。
★30ページには関水金属の広告があり、新製品D51蒸気機関車が「好評発売中!」として掲載されています。このD51はマイナーチェンジを施されているものの、基本的に同じものが35年後の今も発売されている超ロングセラーです。この当時の価格は5500円。同じページの上にはアダチの16番D51とC57の広告があって、こちらが完成品で13500円(C57は14000円)。16番が安かったのか、Nゲージが高かったのか・・・。それはともかく、35年前である1973(昭和48)年の35年前は1938(昭和13)年!。Nゲージやナローはおろか、16番ですらまだ姿を現していない時代です。1973年を挟んでその前の35年とその後の35年の落差にはビックリですよ。

(2011/6/5追記)

関水金属-KATOのD51ですが、ご存じの通り2010年に最新技術で完全リニューアルされました。もっとも旧製品の方も「SL列車セット」と併売されているのでありますが。こうなったらあと数年作って、40歳を目指して欲しいところであります!

*1:1940~50年代生まれの先輩方に話を聞くと、1960年代の学生時代にブラスメーカーのハンダ付けバイトをやった経験のある方が非常に多いのです。なので、ペーパー派やプラ派の人でもハンダ付けが上手かったりします。