軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

TMS1980年7月号を読む

★先日買ってきたTMS(鉄道模型趣味)誌7月号を読んでます。表紙のNゲージレイアウト、良いですね〜
表紙をめくると1ページ広告で「夏の増刊プレイモデルNo.5 7月1日発売!」とあります。増刊というとNゲージマガジンが誌名変更したのかしら…。ページをめくると「おなじみカワイの80系 近日再発売!!」だそうですよ。その次のページには「学研Nゲージ鉄道模型シリーズ」…あれれ、7月号は7月号でも、今から30年前の1980年7月号ではありませんか!
というわけで、鉄道模型趣味誌1980年7月号(No.389)を読んでみたいとおもいます。
★表紙は87分署(87.Precinct)製作のNゲージ集合式モジュール。TMS増刊プレイモデルNo.2に掲載されたもので、この号に掲載されている訳ではありません。この当時はこういう「本文とは関係ありません」パターンの表紙が時たまありました。もしかすると80年7月だから87分署…っていうちょっとした遊びなのかしら??
87分署というと「ダックス」はじめナローゲージ模型での活躍が有名ですが、初期のプレイモデルの編集をはじめとするNゲージ分野での活躍は意外と忘れられていますね。
★ところでこの号の表紙から、誌名の「鉄道模型趣味」のロゴが現在使われているものに切り替わり、表紙のデザインも変わったのです。この号の末尾の「編集者の手帖」欄には「従来と同じように木村一男氏にデザインをお願いした成果である」とあり、デザイン変更の理由の一つが書店で目立つ為であること、TMSの80%以上を全国の書店で販売している事が記されています。SLブーム、Nゲージブームを経過したこの時点では、TMSというのは模型店で買う雑誌でなく、一般書店で買う雑誌に変化していたのです*1。デザイナーの木村一男氏については、以前に本雑記帳でとりあげていますのでそちらをご覧ください。
「編集者の手帖」欄にはこの他「一般平均のファン層を常に頭において編集するのは当然とはいえ、ファンの投稿の多いレイアウトとナローの原稿ストックをいかにバランスよくまとめるかには頭を悩ます」とも書かれています。ナローが熱かった時代なのでしょう。
★巻頭記事は架線集電システム・自動運転をとり入れたNゲージレイアウト「すずしろ鉄道」。自動運転を含めた電気系統について回路図入りで説明されています。どのようなレイアウトだったかは作者の方のWebページにプラン図その他が掲載されていますので、そちらをご覧になると良いでしょう。
-http://suzushiro87.web.infoseek.co.jp/layout/oyumi.htm

★レイアウト記事では目黒高校鉄道研究部のNゲージ集合式レイアウトの記事も掲載。モジュール総数38、全周30メートル余との事。顧問の岩間先生がTMSのレイアウトコンテストによく応募されていた熱心なモデラーであった為か、当時目黒高校鉄研の活動は盛んであり、同世代として羨ましく思っていたものです。最近ではJAMなどでも中学や高校のクラブが集合式モジュールレイアウトを出品していたりしますが、目黒高校は学校の部活で集合式レイアウトを作ったごく初期の例ではないかと思います。
★レイアウト関連と言えば、この号では鉄道模型アニメ・アイデア入賞作発表」も掲載。アニメといってもテレビでやってるアレではなくて、レイアウト上でアクセサリーなどを動かすという意味で「アニメーション」の言葉を使っているもの。このアイデアコンテストはこの1回こっきりでした。入賞作の多くはレイアウト上で自動車を動かすというもの。中でも入選の「ら線を回転させて動きを与える」というアイデアが秀逸です。
★そのアニメアイデア入賞作発表の次のページには、「壬生おもちゃ団地にトミックス新工場落成」の小記事。これは現在のトミーテックの本社工場です。トミーにしろカトーにしろ、Nゲージブームで得た資金を生産設備や製品ラインナップの拡充に回し、それが現在に繋がっているのでしょうね。
★その次のページは「製品の紹介」。中村精密のNゲージC51や関水金属EF65・EF70改良新製品、アスターホビーの1/20 45mmライブスチームのボールドウィンB1リアータンク、そして乗工社のHOナロー小型シェイが紹介されています。
中村精密のNゲージC51は上回りがホワイトメタル製。日本のNゲージでは初めて(かつ現在でも珍しい)テンダードライブ方式。それまで16番メーカーだった中村精密はこの製品でNゲージに進出、「ミリオンシリーズ」の名でこの後C53、C58などが出たのでありますが、中村精密改めナカセイが業務縮小し*2、一方ではマイクロエースがプラでNゲージ蒸機を出しまくった今日となっては、すっかり忘れられたシリーズとなっています。「Nゲージ蒸気機関車」さんで各社のNゲージC51と比較しつつ詳しく紹介されていますので、興味のある方はご覧下さい。

なお、実際に発売された品はキャブが真鍮エッチング製ですが、製品の紹介欄やこの号の広告に掲載されている品はキャブもホワイトメタル鋳造になっています。
関水金属…今日のKATOのEF65/EF70は、まだスカートが台車と一緒に動く時代*3EF65はそれまで500番台しかなかったのが、この前年にPF型1000番台が出て、そしてこの時に一般型塗装の0番台が初めて登場。ナンバープレートがはめ込み選択式となったのもこの時です。
乗工社のシェイはベースキットで19900円。前年にカツミの阿里山シェイが発売されていますが、こういった日本人好みの小柄のシェイの製品化は初めてだった筈。このシェイは私も先輩から譲って頂いたものを所有していますので、そのうちご紹介致しましょう。
車両以外では模型のタイチ製品の「Nゲージ用自動制御装置・信号付パワーパック」なる品が紹介されています。この製品はエンドレスにギャップを設けて6分割する事で、5列車までの自動運転ができ、さらに3位式色灯信号機(関水金属から当時発売されていた物を使用する)を連動させる事が出来るという高機能なパワーパック。車両にデコーダーやマグネットを搭載したり、線路にセンサー等を設置する必要は一切ないとの事。当時の価格で45500円との事で、実際に出回った数はごく少数かと思われますが、イベントで集合式レイアウトを展示運転する際などに欲しい装置です。「今ではDCCがあるから不要」という意見もあるかもしれませんが、デコーダーを積まなければなりませんし、さらに自動運転させるにはコマンドステーション以外に何らかの自動運転装置が必要ですし…。
★車両関連の発表記事では、「D52のひく軍用貨物列車」が目を引きます。太平洋戦争中の軍用列車をイメージして作られ16番作品で、荷物として1/76のプラモデルを利用した戦車各種が搭載、牽引するD52も戦時型というもの。作者の方は記事の末尾で「私は決して軍国主義者ではないし、特定の思想に偏執しているわけでもなく」と書かれていますが、当時はまだ戦争が終わって35年、一応こう書いておかないと何となく心配…という時代だったのでしょう。
★もうひとつ車両記事として「特急つばめの編成」が掲載。こちらも16番ですが、12両編成の客車を真鍮板からスクラッチビルドしたという労作。小窓のずらりと並ぶスハ44系を中心とした編成。作者の森井氏は近年では12ミリゲージャーとして活躍されておられますね。
Nゲージ車両工作では「京成スカイライナーとクモハ52」の記事が掲載されています。スカイライナー初代AE車(この当時は初代もへったくれもない!)は、先頭は木型を使って塩ビ板を熱成形、車体はグリーンマックスのナロ10の窓2個を1個につなげて広窓にして利用…とスクラッチに近い大改造で製作した労作。クモハ52もこの当時はGMキットでは製品化されておらず、スカイライナー同様に塩ビ板から絞り出した前頭部にクモハ43の側板を合体して製作した物。この当時のNゲージは今とは比べ物にならない程車種のラインナップが貧弱で、こういった改造によりいろいろな車種を生み出していたのでした。
★この号には名古屋鉄道模型クラブ主催、TMS後援の「'80全国鉄道模型コンテスト」の募集要領と申込書が掲載。このコンテストは名古屋(市立名古屋科学館)と東京(銀座天賞堂)で展示会が行われた催しですが、現在まで続くTMSコンペティションの原型ともいうべきコンテストでありました。
★最後に広告をみていきましょう。
乗工社はこの号では全頁広告。原寸大側面図で近鉄デ45、王子製紙5号タイプ、雨宮、頚城ホハ2、頚城ホジ3、シェイが掲載されています。文字も最小限しかなく、逆にそれが目を引きます。乗工社が全頁広告を出したのは2〜3回しか無かったと記憶していますが、もしかして80年7月=87を記念して全頁広告だったのかしら?!
しなのマイクロの広告は「しなのマイクロ・Nゲージブランド誕生!」との見出し。そのブランド名は「Mycrox」。「”マイクロクス”とお読みください」とあります。これから程なくしてしなのマイクロは倒産。プラモメーカーの有井製作所の傘下となり、製作途中だったプラ製の185系電車やED78、EF64-1000は「マイクロエース」のブランドで発売されるのです。
タヴァサホビーハウスもこの頃から広告が掲載されていました。この号では「ペーパー車体キット発売 クモハ52、サハ48他 各100円」とあります。この「ペーパー車体キット」がどんなものだったか? ネコパブリッシングの「Nゲージ考古学」に出ていた筈なので、お持ちの方は探して見てください。驚きますよ。
編集者の手帖欄の横には「機芸出版社の本は全部揃う 東急ハンズ渋谷店ホビー関連書籍売場(5階)へ!」との広告?があります。東急ハンズの書籍売り場はホビー関連書籍に特化し、かつ豊富な品揃えで、洋書・洋雑誌、さらには80年代後半には鉄道関連の同人誌なども扱っていたのです。寿楽洞書店という会社が担当していましたが、無くなってしまってもう10年近く経つのでしょうか…
鉄道模型工作所モデルアニメートの広告には「C54は価格176000円・7月発売を目ざして進行中」とあり、この号ではラジアスロッド可動装置の図を掲載しています。この頃の17万6000円(1万6000円ではない!)は、今でいえば50〜60万位の感覚でしょうか? モデルアニメートは超高級仕様の16番蒸気機関車完成品を少数生産していたメーカー、広告には電話番号も掲載されていますが「但8P.M〜11P.M.」とある事からして、半ば趣味の副業だったのかもしれません。小さな広告ですが何となくミステリアスなものを感じさせられる広告で、印象深く覚えている方も多い筈。

西荻にあったニットー教材の全頁広告の中に「F.E.WEATHERING CO. 好評のストラクチャーシリーズ 便所手洗器 2組入\150」とありますが、この便所手洗器の模型(1/80)は当時ニットー教材に勤務されていた現モデルワーゲン森川社長が企画・製作した品だったとか。
篠原模型店の広告では「13ミリゲージ用ポイントが揃いました!」とありますが、13ミリゲージが産声をあげてからこの時点で既に20年が経過していた筈。いくらなんでも遅いのでは?と思わなくもありません。
そうそう、「'80 全日本鉄道模型ショウ」の広告もあります。1980年8月1日(金)〜8月3日(日)に東京千代田区科学技術館展示場で開催。入場料は200円。主催は日本鉄道模型連合会と日本Nゲージ鉄道模型工業会。実はこの年だけは、鉄模連ショーとNゲージショーが合体して合同で開催されたのです。
★他にも触れたい記事や広告がありますが、キリがありませんのでこの辺りにて…

*1:50代以上のベテランファンに聞くと「TMSは書店では売ってなかった」「模型店で買うものだった」という話を良く聞きます。

*2:本業の方が傾いたのが原因と噂されています

*3:スカートが台車と一緒に動く様を「あご外し」という人も。確かにアゴが外れた様に見えますね(笑)