軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

関水vsアトラス? パート2 (KATOの固定式線路の起源について)

前回の記事をアップ後、いくつかご教示を頂き、また黒枕木線路(後の固定式線路)発売当時…1969年のTMS(鉄道模型趣味)誌の関水金属広告を一通りチェックしたところ、いろいろと興味深い事が分かってきました。とりあえず中間報告として記事にしておきます。
(2011/06/06追記あり

固定式線路はイタ線路?!

★小泉さんより71〜72年版アトラス-リバロッシNゲージカタログを見せて頂きました。リバロッシとはイタリアの鉄道模型メーカーで、Nゲージでも数々の製品を発売したメーカーです。
このカタログ、イタリア語と英語の併記で、アトラスの線路も掲載されているのですが、興味深い点があります。

  • 品番2501の直線の公称値は124mmで、関水(KATO)の公称値と同一。その他の線路の公称値も関水製品と同種のものと一致。
  • R315は掲載されていない。

小泉さんは、「ATLASは商社にすぎないので、この線路はリバロッシが提案した規格かも。」と推察されていますが、確かに前回書いた通り、アトラスNゲージ線路は「5インチ」と公称していても実測124.5mmだったりと、フィートインチで設計されたものとは思えないフシがあります。企画はともかく、実際の設計・製造は、イタリア・リバロッシ社であったのでは?と推察されます。(この件、海外の書籍等には明確に記されているのかも知れません。どなたかご存じであればご教示下されば幸いです)
★また、先日の記事に頂いたぽれるさんのコメントで、「最近、関水金属の古い線路を手に入れたのですが枕木がこちらの写真のアトラスの線路と同じ形をしていました。裏返してみるとITALYとSEKISUIKINNZOKUの文字が確認できました。」との事。KATO固定式線路でアトラスOEMの品には裏側に「ATLAS USA」と入っていましたが、それ以外に「ITALY SEKISUIKINNZOKU」と刻印されたものも存在していたとは…。

固定式線路は最初はR315しかなかった?

★前回書いた様に、1965年に発売された最初の線路(具体的な名称が無い為、仮に「茶枕木線路」とします)は、曲線半径がR270とR300の2種類でした。この初期線路システムに代わって1969年に発売されたのが黒枕木の線路…後の「固定式線路」*1ですが、当初のラインナップでは曲線はR315mmしかなかった様なのです。発売直後の関水金属の広告、及び大手模型店のニットー教材の広告を見ると、以下のようなラインナップとなっています。

9000 808mmフレキシブル線路 250円
9001 162mm直線線路 60円
9002 54mm直線線路 55円
9011 315R曲線線路(12本組) 1本60円
9012 315R曲線1/3線路 55円
9052 315Rターミナル付曲線 100円
9053 車止付線路 100円
9101 ジョイナー(12個入り) 30円

(TMS 1969年9月号(通巻255号)ニットー教材広告より)
興味深いのは、当初の品番は後の品番…アトラスと同じ2500番台…とは異なり、9000番台が付与されていた事。(ちなみに茶枕木線路の時は100番台を使っていました。)
そして、上で書いた通り、アトラス-リバロッシのカタログを見ると、R1-249mm、R2-282mm、R5-481mmは存在するのですが、R3-315mmはどこにもありません。また、直線162mm及び直線54mmも存在しないのです。
★ぽれるさんが確認された、裏返すとITALYとSEKISUIKINZOKUの文字がある線路の件ですが、私の知る限り、関水固定式線路は自社生産品は「KATO JAPAN」の刻印、アトラスOEMの物は「ATLAS USA」*2の刻印があります。
車輛の床下に「SEKISUI KINZOKU」の刻印があったのは70年頃までの製品で、その後の再生産品からは「SEKISUI〜」の刻印を消して、代わりに「KATO」のマークを入れるようになっています*3。そうすると、「ITALY SEKISUI KINZOKU」の刻印が入っていたロットは黒枕木線路の初期の物と推察されます。
★という事で、R315や直線162mmはアトラスのOEMではなく、アトラス製品と互換性はあるけれど、関水独自の品、そして実際の製造はアトラス同様イタリア-リバロッシに委託していた(前回記事で引用したTMS山崎主筆の「ミキスト」でも「ヨーロッパ製」と明記しています)のではないでしょうか?
1969年の新線路発売当初はアトラス製品に足りない大半径線路や長い直線などをアトラス同様にリバロッシに特注。これらはアトラスでは販売する予定もなかったので、刻印は「SEKISUI〜」になっていた。それ以外は基本的にアトラス製品をそのまま輸入して売っていた。あるいはアトラス-リバロッシからOEMしてもらって自社製品として販売した。そして徐々に自社生産の国産品に切り替えていったが、あまり需要のないような種類は最後までアトラス製品OEMのままだった…というのが現実なのかもしれません。
★まだまだ書くことがあるのですが、長くなったので次回に。もし皆さんがご存じの事があれば、コメントでご指摘頂ければ…と思います。
(続く)

(2011/06/06追記)

ぽれるさんがお手持ちの関水固定式線路の初期の品の画像をアップして下さったので、早速リンクさせて頂きます。

刻印の品番は片方は9011、もう片方は2502。9011は上で書いた通り曲線R315の発売当時の品番、2502は直線162mmのアトラス準拠の番号体系に改訂後の品番。いずれの品も上で書いた通り、アトラスには同種のものが存在しない種類です。
箱の方は1969年に黒枕木線路発売当時の関水金属広告、およびニットー教材の広告に写っている箱と同一、この箱のデザインが固定式線路当初のパッケージだったのですね。
この箱の楕円の部分に何となく見覚えがある方も多いかと思いますが、実はこの箱、輸出向けだとこの楕円の中の文字が「CON-COR」になっているのです。RMM誌132号の112ページ、「紀元前N世紀・第6回」の写真にこの箱のCON-COR仕様のものが写っています。どうやら関水が製造したコンコア向けのNゲージ貨車の箱だったようです。

関連するリンク

*1:「固定式線路」と呼ばれるようになったのは、1981年にユニトラックが発売された後の事です

*2:アトラス製品は近年の物はUSAではなくCHINAになっている模様。バンダイ発売のBトレインショーティーR100線路セットの直線線路はアトラスの品番2501ですが、刻印はATLAS CHINAになっています。但し、関水-KATO製品として販売されたものはすべてUSAだった筈

*3:「SEKISUI KINZOKU」の刻印が入った製品をお持ちの方は少ないでしょうが、103系一般型やリニューアル前の20系客車など、60年代末から存在した製品を裏返して見ると、横長の凸部分がある事に気づくでしょう。そこが「SEKISUI KINZOKU」の刻印を金型改修で消した跡なのです。