軽便鉄模アンテナ雑記帳

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コッペル祭り前夜祭(3)・コッペルに始まりコッペルに終わった乗工社

今週末のコッペル祭り、参加条件は「キット組立/加工品または自作品であること」ということで、コンさんのコッペル30HPキットやトーマモデルワークスのコッペル4tキット、オレンジカンパニーのOナローキットなどを組み立てた作品が大集合すると予想されますが、今は亡き乗工社のコッペルも忘れてはなりません。

▲これが乗工社最初の製品であるB形コッペル(品番R201)。小泉さんが知人より譲り受け、レストア途中の姿を撮影させて頂きました。現在はレストア完了し、快調に走っているとの事→http://www1.seaple.icc.ne.jp/nkoizumi/HO-9MotivePowerSteam2_j.htm
日本のナロー鉄道模型界に大きな影響を与えた乗工社。その製品の歴史を振り返ると、同社はコッペルに始まり、コッペルに終わったメーカーであった事に気が付きます。乗工社最初の製品は1975年のB型コッペルキットであり、最後の製品は2000年発売の木曽Cコッペルスーパーディテール完成品だったのです。
コッペル祭り前夜祭・3回目では、その乗工社コッペルの歴史をザッとおさらいしてみる事にしましょう。

初代コッペルの登場

1975年、乗工社が設立され、その最初の製品として「エバーグリーンシリーズ」と銘打ち、1/87 9mmナローのコッペルBタンクが発売されました。
乗工社の歴史については西南海観光鉄道さんの「探究・乗工社」、ならびに軽便鉄道模型祭にて南軽出版局より発売される「軽便讃歌」に収録の松本典久氏による記事「倉持尚弘さんのこと」を見て頂くとして、このコッペルは乗工社最初の製品というだけでなく、日本型ナローの普通の機関車としても最初の製品。これ以前にはつぼみ堂の10.5mmゲージ木曽ボールドウィン(そもそも16.5mmゲージ版もあった故、かなりのオーバースケール)、珊瑚のダックス(日本初の本格的ナロー製品ではあったものの、プロトタイプは日本型ではなかった)位しか日本製のナロー動力車は存在せず、海外製品ではエガーバーンの2号機がコッペルタイプとして日本型に似合うとされていたものの、その2号機はエガー倒産により入手困難になって久しかったのです。
製品の形態は真鍮バラキットで、プレス・ドロップ・ロストを適材適所に用いたしっかりとした作りの本格的製品でありました。この時代の事ゆえにモーターはマブチキャラメルモーターで、ウォームとヘリカルギアにより第2動輪を駆動し、ロッドにより第1動輪に連動する方式。品番はR201、お値段はキットで8000円でした。
プロトタイプは浜松鉄道(後の遠州鉄道奥山線)の5号機、6号機。金田式分類法によれば新設計40HP、臼井式分類法によればグループB1400ミリなのですが、この製品の寸法データを見ると、興味深い事に気が付きます。
鉄道模型趣味(TMS)誌1975年3月号の「製品の紹介」欄では、以下の様に紹介されています。

外観・構造ともに模型化設計のすぐれた製品。スケールダウンはなかなか巧妙で、1/80とも1/87ともとれ完全な縮尺にとらわれず、うまく形態のバランスをとってまとめている。
主要寸法は、端梁間長さ48mm、軸距15mm、動輪径7mm、煙突高さ34mm、そしてキャブ幅20mm

ちなみに実車の寸法は端梁間長さ4016mm、軸距1400mm、動輪径600mm、煙突高さ2826mm(金田茂裕著「O&Kの機関車」P81による)。明らかに実車の寸法そのままでなく、適宜アレンジしてある事が分かります。また、当時西武山口線で動態保存され、多くのファンに親しまれていた井笠鉄道1号機をそのままプロトタイプに選ばなかった事も、汎用性を考えての事かもしれません。
「1/80とも1/87ともとれ」というのは、この当時は乗工社/珊瑚の1/87ナロー以外に1/80ナロー製品(ひかり模型など)も市場に出回っており、またファンの間でも日本型16番に合わせて1/80でナローを楽しむ人も多かったですし、イギリスPECOの1/76(OOスケール)ナローもTMSにより輸入され親しまれていた時代だからでしょう。9mmナローが1/87一辺倒になったのは、乗工社がほぼ市場を独占し、また後に続いたメーカーが圧倒的なシェアを誇った同社製品に合わせ1/87スケールを採用した(採用せざるを得なかった)1990年代以降の事なのであります。
この乗工社コッペルは1976年に改良製品(カタログ等ではMk.IIと呼称)が発売、1977年には中間に動輪を追加し、サイドタンクを短くしたC型コッペルが追加(品番R204)。この間にB型に関してはサイドロッドによる連動を廃してギア連動に改められ、同時にホイルベースが長くなっています(第1動輪が前方に移動)。さらに1979年には動輪にスポーク表現を追加した改良製品(Mk.III)が発売となります。また当時つつじヶ丘にあった乗工社ショールーム(SR)限定製品として、特製完成品の「コッペル西大寺」(品番R208)や「木曽コッペル」も発売された様です。
こうして乗工社コッペルは日本のナロー製品の定番になるかと思われたのですが、1980年代半ばに乗工社は海外向け輸出にシフトすると共に日本型製品の供給を中止。コッペルも市場から姿を消してしまうのです。

春は来たのだが

1990年、乗工社は日本型製品の復活を模型各誌に広告。復活第一弾として岩手軽便ボールドウィン(くろがねのあひる)と軽便コッペルB型の発売を告知。またスーパーディテールの「くびきのコッペル」の発売も予告します。岩手軽便ボールドウィンは本格的バラキットでしたが、軽便コッペルB型(品番R227)はプラフレームパワーユニットPU101を使用したエコノミー仕様。価格は安く簡単に作れるのは良かったのですが、バグナルや加藤型DL/酒井型DLのようにパワーユニットを使いつつも巧みに実車の印象を捉えた製品とは異なり、コッペルと言わればコッペルに見えなくもないという少々苦しい製品でした。

▲組立説明書より
一方くびきのコッペル(品番R228)は頚城鉄道の2号機を忠実に模型化したハイグレードな製品で、高価な完成品オンリーだったものの、あっという間に完売したのであります。当時はバブル経済まっただ中。また70年代にポーター亀の子等のパワーユニットシリーズでナローに目覚めた「軽便小僧」…その多くが昭和40年代前半生まれ…が、時を経て成人して丁度就職した時期(すなわちまとまったお金を使えるようになった)でもあり、それがハイグレードスーパーディテールコッペルの好評につながったのでありましょう。
92年には井笠コッペル井笠鉄道1号機)を同じくスーパーディテール完成品で模型化、この後は90年代を通じて乗工社コッペルはスーパーディテール頚城と井笠のバージョン違いが何度も発売されたものの、これらは完成品のみでキットは発売されず、作るモデラーや自分の鉄道仕様にしたいというファンからは不満の声が高まっていったのでした。

最後の木曽コッペル

99年にはパワーユニット仕様のC型コッペル(エコノミータイプ)が発売(品番R234)。91年のパワーユニット軽便コッペルB型が不評だったのか、動輪を1軸増やしただけにとどまらず、上回りは完全新設計し、より細身のプロポーションとされました。しかし昔の初代コッペルのような製品を望む人には満足できなかった様です。

▲組立説明書より
なぜ以前のコッペルキットを改良再生産せず、特定機仕様のハイグレード完成品コッペルとエコノミーの(いささか似ていない)コッペルという両極端なラインナップにしてしまったのか理由は定かではありません。もしかするとハイグレード仕様の方は、キットとして出してもファンには組み立てられない…と考えていたのかもしれません。ともあれハイグレード完成品を歓迎する声がある一方、工作派モデラーやレイアウト派モデラーを中心に乗工社に対する不満の声、以前の乗工社と違うではないかといぶかる声も良く聞いたものでした。
エコノミータイプのC型コッペルの次の乗工社コッペルは、頚城、井笠に続くハイグレードスーパーディテール仕様の木曽Cコッペル。1999年12月20日発売の模型各誌の広告で発売が告知され、製品紹介欄でもサンプル品が紹介されました。しかしその木曽コッペルが出荷されるより前、年が明けて2000年の1月17日、乗工社は破綻してしまい、25年の歴史に幕を下ろす事となったのです。
出荷前だった木曽コッペルは結局天賞堂が引き取ったようで、同店店頭と一部の店でのみ販売。これが乗工社最後の製品となったのです。まさしく乗工社はコッペルに始まり、コッペルに終わったのでありました。

自分だけのコッペル

その後、乗工社ハイグレードコッペルはモデルスIMONに引き継がれましたが、イモンになってからは完成品のみならずキットも発売されているのはご存じの通り*1。多くの工作派モデラーの声が届いたからでありましょう。
また、最近人気の今野コッペルトーマコッペルは、皆さん自分なりの仕様に組み立てて楽しんでおられます。やはりナローファンの多くはお仕着せの完成品ではなく、自分だけのコッペルが欲しいのではないでしょうか? 今後、コッペルを製品化するメーカーがありましたら、是非そういったユーザーの気持ちをくみ取って頂ければ…と思う次第であります。
今週末にはいよいよコッペル祭りが開催されます。お手元に乗工社コッペルがありましたら、クリッターズクラブブースに持ちこまれては如何でしょうか? ただし、今回は完成品はNGですので、初代コッペルやエコノミータイプコッペルのキットを組み立てた物に限りますが…

(2011/10/02追記)

当初、初代B型コッペルはMk.I→Mk.IIとロッド連動で、Mk.IIIでギア連動に改められ、動輪の輪芯にもスポーク表現がなされた…と認識していましたが、あららぎさんが調べた結果によれば、Mk.IIIが出る以前にギア連動に改良されていた模様です。つまり、ロッド連動/輪芯スポーク表現無し→ギア連動/輪芯スポーク表現無し→ギア連動/輪芯スポーク表現あり…と順次改良されていった様です。さらに、ギア連動になった際にMkII.になった際にホイルベースが長くなっている事も確認しました。そのような訳で文章を一部修正致しました。また、軽便コッペルB型、C型コッペルエコノミータイプの説明書からの引用画像を追加しました。

(2011/10/16追記)

最近あららぎさんや西南海さんがアップされた記事によれば、Mk.IIにおいてロッド連動なれどホイルベースは長くなっていた模様。つまりギア連動になる以前にホイルベースが長くなっていたのです。どうもまだまだ分からない事が多いです。

関連するリンク

*1:但し頚城2号機は除く