軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

諸河久作品展「軽便風土記」

半蔵門のJCIIフォトサロンで開催中の諸河久氏の作品展「軽便風土記」を見に行ってきました。
★諸河さんといえば、ブルトレブーム世代の小僧(現:オッサン)にはブルトレ写真、あるいは林順信氏とのコンビによる「都電の消えた街」の印象が強いのですが、ここまで熱心に末期の軽便を撮影されていたとは、今まで知りませんでした。
雑誌や書籍に単品では掲載されていても、まとまった形で発表された事はなかったと思います。
★末期の軽便の姿を収めた写真集は、この10〜20年の間にいくつも刊行されており、それらを書棚に常備してさんざん眺めてきたワタシとしては、今更新しい発見はあるのかな?と思いつつ、皆さんがSNS上等などで「素晴らしい」と激賞しているので足を運んでみたのですが…いや、なんとも素晴らしい写真ではないですか! ナローファン、それもレイアウト派は必見。猫屋線などでナローレイアウトに入門しようという方には特にお勧めであります!!
★もしかすると、展示された写真は今後写真集としてまとめられて刊行されるかもしれませんし、会場では図録も売っています。しかし、この写真展でプリントを見た方が良いです…っていうか是非見てください。情報量というか、そこから伝わるものが違うのです。
モノクロのプリントですが、風の音が、草木のざわめきが、暖かい陽の光か、そして軽便の線路のジョイント音が聞こえてくるように感じるのです。まるでタイムマシーンで半世紀前にタイムスリップしたような感覚(実際にそんな経験をした事はありませんが…)にさえなりました。
★今回展示された写真の多くは、車輛だけを写した写真ではなく、周囲の風景や人々を含めて写し込んだ写真で、それ故に我々モデラー、特にレイアウトを志す人には大いに参考になるでしょう。一言で言えば「まるでよく出来たナローレイアウトを見ている様だ」あるいは「こんなレイアウト作れたらいいなぁ」と思う写真ばかりなのです。また、末期の軽便ということで、まさに「猫屋線」の世界であります。
★現役時代の軽便の姿を写真に残された、牧野俊介氏、高井薫平氏、新井清彦氏、けむりプロ…といった先輩方の多くが元々モデラーで、模型の資料として各地の軽便を写されたのはよく知られているところ。諸河さんも元々は模型の資料として鉄道を写し始めたそうですが*1、それ故にナローゲージモデラーの琴線に触れる写真になっているのではないか?とも思いました。
★この写真展、最終日(9月30日)は軽便鉄道模型祭と重なるので、両方をハシゴしてみるのも良いでしょう。また、機会あれば、東京以外の場所でも開催して頂けたら…とも思う次第であります。
(2020/10/29追記)
その後、この写真展で展示された写真が主体となったムック「モノクローム軽便鉄道」(イカロスムック)が発行されました。猫屋線でナローを始めた方、日本型ナローレイアウトを志す方にお勧めの一冊であります。

モノクロームの軽便鉄道 (イカロス・ムック)

モノクロームの軽便鉄道 (イカロス・ムック)

  • 作者:諸河 久
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: ムック

*1:そういえば、某御大が学生時代にアメリカ輸出向けブラス機関車の工場でハンダ付けのバイトをしていた時、日大鉄研の皆さんもその工場にバイトに来ていて、その中に若き日の諸河氏もおられたとの事。昔はそういうバイトでハンダ付けの腕を磨く若手モデラーも多かった様です。