軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

とれいん2月号を読む

★本日一足先にとれいん2月号を入手。随分厚みが薄くなりましたね。表紙もシンプルになっています。
目次を見ると、平井憲太郎氏が編集総指揮、松本謙一氏がアート・ディレクション担当、とれいん企画会議が企画担当となっています。なんこう編集長はお休みなのかな?
・・・あれれ、このとれいんは2月号は2月号でも、1975年2月号。しかも創刊第2号ではありませんか!
というわけで、今から35年前の創刊されて間もない頃のとれいん誌を読んでいきたいと思います。
★目次の次の記事は「模型店散歩」。製品紹介のコーナーです。珊瑚模型店の16番DE10と天賞堂の16番ED42が紹介されています。いずれも製品も編集部で購入した旨が文中にありますが、当時はまだ製品の出る数が少なかったから実際に買って確かめる事が出来たのですよね。また別役実の「淋しいおさかな」という童話の本が『この本の中に「煙突のある電車」という話がひどく面白く楽しいのでご紹介する次第である』として紹介されています。
★その次はこの後も長く続く事となる松本謙一氏による「Pipe Smoking」欄で、「塗装の季節」という話。ゲージ論や価格論争、商標登録問題で賑わった後年のパイプスモーキング欄に比べると、随分と穏やかな印象を受けます。それはともかく、この号の本欄では、松・謙氏は「ウェザリングを"せっかくきれいに塗装されているものを汚す"と誤解している向きも多いようだ。私はウェザリングの訳をこうつけている。ウェザリング=渋みをつけること。」と書かれています。この頃の作品には今の目で見ると雑で汚いだけのウェザリングも多かった印象があります。もちろん今見てもレベルの高いセンスの良いウェザリングをされていた方もいましたが。それはともかく、「渋みをつける」というのは良い訳だと思います。
★8時半のモデラー足を外された客車」は、ガラクタになっていた客車の車体を実物によくある倉庫や詰所にするという記事。こういうちょっとした楽しめる工作の記事って、最近は少なくなりましたね。あと「8時半のモデラー」というコーナー名が良いですね。
★ギャラリーとれいんは「サンディーリバーの車輌たち」。佐藤寛氏の手になるHOナローのサンデーリバー(SR&RL)の車輌作品が写真で紹介されています。ミニトリックスのモーターを使ったという巡察車、珊瑚のダックスを改造したフォーニー、ペーパー自作による客貨車・・・。松本謙一氏は解説文で「"実にいい気分の模型"なのである」と、この作品群の魅力を的確に表しています。そうそう、この記事でサンデーリバーを知った方も多いようです。
★レイアウト記事は「二つのレイアウト」として、まず米国型レイアウトD&GRNが紹介。この後もとれいん誌上で度々登場する事となる松本謙一氏製作のレイアウトで、「着工1962年9月であるから、もう12年目を迎えようとしている」とあります。
★「二つのレイアウト」のもう一方が、一部のナローファンには伝説となっている「カステラ箱のレイアウト」。松本典久氏の手になる275×185mmのエンドレス一つのミニレイアウト。グラフ写真では頚城のコッペルが走っていた頃の西武山口線をバックに、屋外でピクニック&レイアウト運転を楽しむ姿が大きく写っています。良く見ると、テーブルの上にはカステラ箱レイアウト、サッポロビールの缶やサントリーローヤルの瓶、ペンタックスSPブラックに混じって、けむりプロの「鉄道讃歌」もさりげなく置かれています。
このカステラ箱レイアウト、松井大和氏の著書「箱庭鉄道模型パイク」の中でも「伝説の」としてカラー写真で紹介されていましたし、それ以前には「犬走志ん」誌でも紹介されていますので、ご存知の方も多いでしょう。
(2012/01/08追記)このレイアウトは2011年のJAMコンベンションで展示されました。詳しくは以下の記事をご覧下さい

★「ED196を作る・・・」は前里孝氏の作品。歌川模型の製品をベースにしているところが時代を感じさせます。最初のページの左側に、1頁をのびのびと費やして、山並みをバックに鉄橋の上を走る実物のED19のカラー写真が掲載されていますが、この辺りは当時既に実物の写真集で定評を得ていたプレスアイゼンバーンならでは・・・という感じがします。
★この号はナローの分量が多い気がしますが、模型向きの実物紹介記事として、堤一郎氏による「花巻電鉄 温泉行きの軽便電車」も掲載されています。「プロトタイプ2呎6吋」として初期のとれいん誌に連載されたシリーズで、1/80スケールのフリーハンドによる味のあるスケールイラストと写真で花巻電鉄の電車たちを紹介する記事。この当時はナローの車輌の図面もあまり出回っていなかった時代であり、このシリーズの堤さんのスケールイラストを元にペーパーやプラ板でスクラッチされた人も結構いるのでは?
★ナロー関連では「僕の心象鉄道 俺はけーべんの運転士」。文と写真はぎんがてつどう。この当時鉄道ファン等にも作品を発表していたグループです。この記事は「Imaginary 井笠」と銘打っており、井笠鉄道(当時廃止されて間もない頃)の運転手を主人公としたストーリー。最後の1行に思わずニンマリです。そうそう、最近この「ぎんがてつどう」の後身である「milky way workshop」のWebページが開設されています。興味のある方は是非。
http://hwm8.gyao.ne.jp/via-lactea/
★「台湾のD51 DT650」は、安達製の半完成キットを小改造して台湾のD51同型機に仕上げた作品。作者は「新高 昇」となっていますが・・・
★最後に広告を見ていきましょう。「CERX inc.」なるメーカー(住所は記載されていませんがTOKYO JAPANとあり、電話番号は03-410-XXXX)が「超小型ブラストユニット(新開発IC)」という品の全ページ広告を掲載しています。HOゲージ用より発売中とあり、写真では16番とNゲージD51のテンダーに装置が搭載されています。この製品、はたして実際に発売されたのでしょうか?
立川駅前・中武デパート4階模型コーナーの城山模型(城山産業株式会社模型部)の広告にはインタアーバン用凸電などのアメリカ型製品の写真が掲載。「ナローゲージ客車 バラキット・完成品発売中」とある他、「これらの製品は米国へ輸出した製品を再輸入したものです」との注釈があります。この城山模型はTMS(鉄道模型趣味)誌には広告を出しておらず、1970年代前半に数号だけ出た「鉄道模型の友」誌と、初期のとれいん誌にのみ広告が出ていました(2012/1/23追記:鉄道ファン誌にも一時期広告を出していたとの事)。そういえば松本吉之氏の「鉄道模型考古学」(ネコ・パブリッシング刊)では城山模型としなのマイクロとの関係について書かれていました。この城山模型、実は家元が若かりし頃にバイトしていたそうですが、突然閉店してしまったのだとか・・・。

★TMSに出ていない店の広告としては、横浜相鉄ジョイナス4Fのチヨダママストアと横浜伊勢佐木町日活会館1FのBIG BOY(この2つの店は同一系列で1つの広告になっています)が掲載。その下には喫煙具専門店加賀屋の「ゆとりの時間 パイプを人生の友に」という広告。松・謙氏ご愛用の店だったのでしょうか?
★この頃のとれいんは背表紙はなくて平綴じ。厚みも今とは比べ物にならないほど薄いのですが、なんともゆったりとして優雅なムードに溢れています。もっともそんな優雅すぎる内容では現在では商業的には難しいのかもしれませんが、利益を考えずに完全に趣味で作る同人誌やWebサイトであれば、こういうムードにするのも良いかも知れません。そんなことを思いつつ35年前のとれいんのページを閉じたのでありました。サア、パソコンの電源ヲ切ロウ。

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