軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

TMS2010年2月号を読む

新年早々間違えて41年前のTMS(鉄道模型趣味)誌を紹介し、先日は間違えて35年前のとれいんを入手してきた本ブログでありますが、今回は正真正銘最新のTMS誌のご紹介であります。
今回のTMS誌はナローゲージャーにとって(あるいはレイアウト派モデラーにとって)必読の1冊であるかと思います。というのは、家元のHOナロー6.5mmレイアウト「栗倉石材興業」が掲載されているからです。

鉄道模型趣味 2010年 02月号 [雑誌]

鉄道模型趣味 2010年 02月号 [雑誌]

900×450mmというコンパクトなサイズながら、それを感じさせないひろびろとした風景のレイアウトですね。このレイアウトはネット上では軽便祭に来場された方々により断片的にレポートされているだけで、実際のところ全体像は分らなかったかと思います。この記事を読んで「なるほど」と思った方も多いのでは?
改めて記事を拝見すると、この作品は総合点が高いなぁと思う事しきり。模擬テストで全科目偏差値87、新春かくし芸大会で10点10点10点10点9点10点!というような感じです*1。レイアウト本体のデザインやプラン、基本工作やシーナリーの表現、ストラクチャー、役者である車輌、ギミック、そして写真(この記事の写真は全て作者撮影)と、全てにおいてバランスよく高得点であり、TMSレイアウトコンペで入選を受賞した事に頷けます。
また、イベント等で「見せる」事に重点を置いているのも大きなポイント。日本のレイアウトでは案外重視されていなかった部分です。サイズも900×450で箱状になっているため、ミニバンやワンボックスカーを用意しなくとも、コンパクトカーの後席に積んで簡単に運搬可能なのです。
ところで鳥が空中を飛んでいるレイアウトって、実はこのレイアウトが日本初かもしれません。(もし以前にもあったとご記憶の方はご教示下さい。鳥が地面や木の上に止まっている作例は過去に一杯ありましたが・・・)
★レイアウトの記事はもう一つ、13ミリゲージの5500×2730mmの大型レイアウト「己亥鉄道緑山線」が掲載。蒸気機関車全盛時代の国鉄幹線の機関区と本線駅を中心とした風景のレイアウトです。作者の鈴木氏は「レイアウトを持つためには60歳以下で着手しなければ不可」という昔のやま氏の記事を打ち破ろうと61歳で着工したとの事。2007年9月着工とありますから、レイアウトコンペの応募時期等考えると2年足らずで作ってしまったという事になります。度肝を抜かれたのがストラクチャーの扇形庫に使う窓枠をエッチングではなく糸鋸でコツコツ抜いた(その数1600オーバー!)という話。とにかく労力が掛かっていますね。このあたり車輌工作派の方のレイアウト作品だなぁと思います(良い意味で)。また、冒頭の過去の模型歴の回顧部分で語られている鉄道模型社の店頭で現・珊瑚模型店の小林社長に吹き付けしてもらった話とか*2、カワイモデルで13ミリゲージの車軸を売っていたとかのお話も興味深かったです。
ところで、実はこのレイアウト、「レイアウトに欲張りは禁物」を忠実に実行しているように思えます。機関庫や給炭・給砂施設、駅施設をメインとし、その他の部分は山岳ループ線と川(湖)を渡るガーダー橋という見栄えのするシーナリーを設けた他は、街並みその他は特になく、意外とシンプルなのです。
★最近よく登場される大谷全彦氏の今回の記事(というより写真)は「『けえべん』を訪ねて」と題して西大寺の風景を再現。ガーダー橋を渡るボギー気動車キハ7は乗工社製品の加工ですね。どこまでが模型でどこからが実景なのか良く分からない位溶け合っています。
★何気にナローの多い今月号ですが、ナロー関連ではもう一つ、実物記事として北川俊一氏の「オーストラリア東海岸の製糖軌道を眺める」が掲載。未だに現役の軌道ですが、ナローといえども近代型のDLが牽引する長大編成で、雄大な風景の中を走っています。写真も綺麗です。
★車輌作品ではペーパー車体のベテランである大熊重男氏の「ペーパー車体でまとめた 西武451系2連製作記」が印象に残りました。モハは自作、クハはペーパーキット使用。ディテールは程々であっさりとしていますが、「16番」ってこの位で良い感じもします。
★Nゲージの車輌工作記事は阿部氏の「交直流機ED92の製作」が掲載。Nゲージコンペでの上位入賞作で、スタジオフィールのキットをベースにしっかりかっちりすっきり組立加工した作品。今ではマイクロエースからプラ量産品が出てしまっていますが、真鍮キットを上手い人が組み立てた作品ならではの良さを感じます。
★毎号お馴染みの小林信夫氏の「ストラクチャー雑感」は「銭湯考」。作例は例によってペーパーによる1/80スケール。東京の銭湯と関西の銭湯の建物の違いについても触れられています。
★製品の紹介欄にはペアーハンズの神岡鉄道ブレーキ車"フ"が掲載されています。このキットは既に発売されていますが、完成させた例をまだ見ていないので(年末の大宮でも完成サンプルは見かけなかった気が・・・)参考になります。一般的には天賞堂のプラ製16番の東芝40t標準凸型電機が目を引くかと。こんなもんまでプラで発売される時代になったのですねぇ・・・
★広告欄では、今井モデル(旧今井製作所)の広告に店主氏の逝去のお知らせ。「創業以来40年間、ユーザー様にご愛顧いただきましたパワーパックの製造および修理は今後お受けできなくなりましたことをお詫び申し上げますとともに」とあります。今井といえば各種のパワーパックで知る人ぞ知るメーカー、その多くは大手模型店向けのOEM製品だった様で*3、知らず知らずに今井のパワーパックにお世話になった人も多い筈。
★最後に「編集者の手帖」にて、「DCCマニュアル2009」に続く根津達也氏の新刊の件が書かれています。どうやらデジタルサウンド関連の本の模様です。
★そうそう、2010年TMSレイアウトコンペの募集も出ていますね。受付期間は5月12日から19日。レイアウトをお持ちの方、製作中の方はチャレンジしてみては如何でしょう? 今年もまた「乙」のレイアウトが上位入賞目指して応募されるのかな?

*1:そういえば新春かくし芸大会は今年で終わったんでしたねぇ〜

*2:昭和30年代は自分で塗装するのではなく、模型店に依頼する事も多かったのです。あと、鉄道模型社から独立して生まれた模型店というのは案外多い様です。

*3:カツミ他。確か珊瑚模型店から発売されたレイアウトパネルに組み込める小型パックも今井製だったように思います