軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

コッペル祭り前夜祭(1)・よく分かるコッペル


★今年(2011年)の軽便鉄道模型祭にてクリッターズクラブが開催する祭内祭は「コッペル祭り」との事。当日は沢山のコッペルの模型が集まる事でしょうが、いざ「コッペルって何?」と聞かれると…うーむ、うまく答えられません。そこで本棚より参考書籍を取り出し、自分の為のメモも兼ねて解説をまとめてみました。名付けて「よくわかるコッペル」
★コッペルの蒸気機関車については、蒸気機関車研究の第一人者であられた臼井茂信、金田茂裕両氏(共に故人)の著書が詳しいのですが、臼井氏の「機関車の系譜図」(交友社刊)は売り切れ絶版、金田氏の「O&Kの機関車」(機関車史研究会)も先日在庫*1が売り切れてしまった様です。そのような訳で、近年ナローに興味を持たれた方には、コッペルの概略及び体系を理解する資料がないという状態*2。そこで今回は、両氏の書籍を参考に、ごく大ざっぱではありますが、ナロー鉄道模型ファン向けにまとめてみました。
★コッペル社の正式名称はオーレンシュタイン・ウント・コッペル(Orenstein & Koppel)。蒸気機関車内燃機関車を多数製造したドイツのメーカーです。コッペルは超小型機から大型機まで各種製造したのですが、日本には1900年代から1930年代にかけて、主に軽便鉄道や産業用軌道向けの小型蒸気機関車が多数輸入され*3、一部は1960年代まで現役として活躍。そのような訳でナロー鉄道模型ファンにも人気が高く、複数のメーカーから何度も何度も模型製品化されている機関車であります*4
★コッペルといっても軽便蒸機だけでなく、1067mmゲージの地方私鉄向けのBタンク、Cタンクも多数輸入されていますし、少数ですがナローの内燃機関車も輸入されていますが、ここではナロー向けの軽便蒸機に限定して解説します。

臼井式分類法と金田式分類法

★日本に輸入されたコッペルの機関車の多くはレディーメードの既製品。したがって同じような形の物がアチコチに存在します。バスやトラック、現代の鉄道車輛でいえば第3セクター向けのディーゼルカーのようなものです。そして用途に応じて大きさが色々存在します。これは同じドイツのメルセデスベンツBMWの乗用車が、ベンツだったらAクラス、Bクラス、Cクラス…、BMWだったら1シリーズ、3シリーズ、5シリーズ…と見た目は同じ形でも小さいのから大きいのまでラインナップがそろっているのと似たような感じです。
★さて、臼井、金田両氏はそれぞれ独自の方法でコッペルのバリエーションを分類されました。臼井式分類法ではホイルベースで、金田式分類法では馬力で分類されていますが、さらに金田氏は「旧設計」と「新設計」という分類をされておられます(1911〜13年頃に切り替わっているとのこと)。実はこの3つ(ホイルベース/馬力/旧設計or新設計)の分類方法を用いれば、大半の軽便コッペルは分類できるのです。
★旧設計と新設計の違いは以下の通りですが、詳しくない人でもひと目で見分けが付くと思います。
【旧設計】

  • 固定軸距(ホイルベース)がきわめて短い
  • 煙室がボイラーより一回り細い(段差がある)
  • 弁装置はマックス・オーレンシュタイン式(いわゆるコッペル弁)が主。アラン式、スティーブンソン式等もあり

【新設計】

  • 固定軸距が長い
  • 煙室とボイラーが同じ太さ(段差がない)
  • 弁装置はワルシャート式に統一

あなたのコッペルの分類は?

過去に発売されたコッペルの模型について、上記の分類法を用いるとどうなるのかを以下の表にまとめてみました。参考のために、模型製品化されていないけれど実機が有名または保存され現存するものについてもいくつか含めてあります。

実物 設計/馬力 軸配置 ホイルベース 製品化したメーカー 備考
庵原軌道1〜3 旧設計10HP 0-4-0 WB800 HOn:(トーマ),F&S 日本に輸入された中では最小
三重軌道1〜3 旧設計15HP 0-4-0 WB1065 HOn:銀座軽便 原型はスカート付きのトラム形。腰が低くホイルベースが長め
安濃鉄道1〜3 旧設計15HP*5 0-4-0 WB900 On:トーマ  
西大寺鉄道1〜3 旧設計20HP 0-4-0 WB900 HOn:花園  
住友金属製鋼所1 旧設計30HP 0-4-0 WB1000 HOn:今野  
西大寺鉄道6〜7 新設計30HP 0-4-0 WB1200 On:オレンジ  
頚城鉄道1 新設計30HP 0-4-0 WB1200 On:オレンジ  
大川鉄道1〜5(のち西日本鉄道大川線) 新設計30HP 0-4-0 WB1400 (製品化されていない) 1067mm軌間三瀦にて保存
東武鉄道1(←有田鉄道1) 旧設計40HP 0-4-0 WB1100 G:(LGB) 1067mm軌間城北交通公園で保存
浜松鉄道 5〜6 新設計40HP 0-4-0 WB1400 HOn:(乗工社 乗工社初代コッペルのプロトタイプとされる
頚城鉄道2 旧設計50HP 0-6-0 WB 700+700 = 1400 HOn:乗工社IMON、On:珊瑚オレンジ、1/80:トロッコ 頚城にて保存
井笠鉄道1〜3 新設計50HP 0-4-0 WB1400 HOn:乗工社ワールド、On:オレンジ 井笠記念館にて保存
沼尻鉄道C-911(←三幡13) 新設計50HP 0-6-0 WB700+700 = 1400 HOn:IMON  
小川・王滝森林鉄道10(=木曽) 新設計50HP 0-6-0 WB700+700 = 1400 HOn:乗工社IMON  
国鉄ケ92(岩手軽便11) 新設計50HP 0-4-0 WB1400 HOn:ワールド  
沼尻鉄道C-122,123(←栃尾6〜7) 新設計60HP 0-6-0 WB 800+800 = 1600 HOn:ワールド  
井笠鉄道6〜7 新設計60HP 0-6-0 WB 800+800 = 1600 HOn:ワールド、1/80:オレンジ 野辺山SLランドにて保存
西武山口線527,532 新設計70HP 0-6-2 WB 925+925=1850 (製品化されていない) 丸瀬布にて保存
国鉄ケ200 旧設計90HP 0-6-0 WB900+900=1800 (製品化されていない) 国内軽便用では最大級

※メーカー名は以下の通り略:乗工社=乗工社、珊瑚=珊瑚模型店、オレンジ=オレンジカンパニー、ワールド=ワールド工芸、花園=花園製作所、トロッコ=トロッコモデル、トーマ=トーマモデルワークス、IMON=モデルス井門、F&S=Franks & Sea Lion工房。銀座軽便=銀座軽便倶楽部、LGB=レーマン
※メーカー名をカッコで表示したものは、もともと特定の鉄道の仕様をプロトタイプとした製品でなく、結果的にその車輛にほぼ該当するもの。例えばトーマコッペルは庵原とは同型なれどキャブ側面は異なります。
※HOn=1/87 9mm、On=1/48 16.5mm、1/80=1/80 9mm、G=1/22.5 45mmを表します。
★こうして見てみると、乗工社/IMONのコッペルは色々と出ているようでいて、全てホイルベース1400ミリの新設計40HP/50HPなのです(頚城2号機を除く)。実車同様に同じ基本設計を使いまわして(と言うと語弊があるかも…)バリエーションを作りだしているのですね。また、ナロー向けに限定すると言いながら、1067mmのコッペルも2台混ざっていますが、実は1067mm用の中には762mm用と大きさが変わらないものもあったのです*6。また、同じ762mmゲージでも親子程大きさが違う場合もあるのです。
★というわけで、コッペルの軽便蒸気機関車を模型化する際、今回ご説明した分類を知っていれば、市販キットを加工して他の鉄道の車輛にしたりする際に役立ちますし、自作する際にも特徴をつかむ事が出来てより良い模型が出来るかも…。この記事が皆さんのお役に立てば幸いであります。

*1:機関車史研究会の書籍は、ヤフーオークションで購入する事が出来ます。ヤフオク! - henschelundsohnさんの出品リスト

*2:以前と違って各鉄道毎の資料本は多数発行されているのですが…

*3:戦前、鉄道ファンの間では「オーレンシュタイン犬の糞」などと言われていたとか…。それだけありふれた機関車だった訳です。

*4:といってもそれは日本での事であって、ご当地ドイツでは模型製品化されるナロー蒸気機関車はコッペルよりもクラウスの方が多い気がします。

*5:金田氏は15HPとして分類されていますが、私鉄研究家の和久田康雄氏は鉄道史料123号の「四日市・安濃・三重鉄道のコッペル機」という記事にて、鉄道省文書にある要目の数値からして安濃コッペルは20HPではないかと推察されています。

*6:国鉄と同じ1067mmゲージ(3フィート6インチ)であっても、車輛の大きさは762mmゲージ並みという地方小私鉄…すなわちサブロクの軽便鉄道というのも結構存在していたのです。現代でも大井川鉄道井川線があります。