軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

今のナローが小さい?理由

前回のつづき)
さて、今の日本のナロー9ミリ製品が「小さい」のは、1/80でなく1/87スケールを採用しているからではなく、別に問題があるからだとワタシは思っているのですが、今回はそれについて書きましょう。

ナローは思った以上に小さい

実はナローの車輌、特に日本型ナローの車輌は思った以上に小さいのです。
「津島軽便堂写真館」さん、及び「地方私鉄 1960年代の回想」さんに、近鉄の本線とナローの電車が並んでいる写真が掲載されています。ご覧になって頂くと、思った以上にナローの方が小さい事に驚く方も多いでしょう。

先日発売された下津井電鉄特注鉄コレも、普通のNゲージに比べて驚く程小さい事に驚いたという話をネット上で複数拝見しました(正確に1/150スケールで出来ているので尚更)。頭で思っている以上にナローは小さいのです。
さらに、同じナローであっても車両の大きさ(長さという意味ではない)は実に様々。近鉄ナローや下津井などの車体断面は法律で定められた限界一杯ですが、加藤や酒井などの産業用の機関車で3トンや4トンといったタイプはかなり小さいです。おなじみコッペルの蒸気機関車にしても、庵原軌道に入った10HPコッペルと井笠や頚城の50HPコッペル、さらには90HPC型の国鉄ケ200とでは、同じ762mmゲージの機関車であっても驚く程大きさが違うのです。つまり、もともと日本型ナローの車輌は小さいけれど、その中でももっと小さい物もあるという事です。
前回書き忘れた話で、昔TMSのミキスト欄で指摘されていた事なのですが、1970年代に乗工社-珊瑚の1/87ナローとひかり模型やしなのマイクロの1/80ナローが併存していた時代、1/87製品は比較的小柄な車輌を製品化し、一方で1/80製品は比較的大柄な近鉄ナローや下津井などを製品化しており、大きい物がより大きく、小さいものがより小さくという皮肉な状況がありました。この時代の印象が残っていて、1/87だから小さすぎるという印象が強調されているフシもあります。

さらに小さくなった

そしてもう一つ、最近はナロー鉄模ファンの間で、林鉄やトロッコ系を手掛ける人が多くなっており、それに対応した製品が増えているという状況があります。上で書いたようにナローの中でも大きいのから小さいのまでいろいろある中で、最近は特に小さい車輌がスクラッチされたり製品化されたりしており、それゆえになおさらナロー9ミリが小さく見える(というより実際に小さいのですが)のではないでしょうか。
ここだけの話、製品化されているナロー9ミリ製品の小振りな車輌の中には、1/87を公称していながらも実測すると1/80かそれ以上…という例もあります。恐らくモーターその他の関係でやむなくオーバースケールになっているのでしょうが、それでも充分に小さく、よほど実物の寸法に精通している人でないと気が付きません。つまり、1/87だから「小さい」というより、小さい中でもさらに小さい車輌を模型化しているから「小さい」のです。
これにはモーターの小型化(ポケットベルや携帯電話用に開発された極小モーターが鉄道模型に転用されるようになった)も影響していまして、10年前20年前では動力化するなど考えられなかった機関車が走るようになったり、あまつさえ製品として販売されるようになったのであります。ナローではありませんが、最近日本型Zゲージ製品が複数のメーカーから製品化されているのも、超小型のモーターが容易に調達できるようになった(モーターメーカーが規格型として用意している)からに他なりません。
キドマイティはおろか、キャラメルモーターしか無かった時代に設計された乗工社の「加藤型DL」「酒井型DL」などはどうみても1/87ではなく、最近のモデルワーゲンやワールド工芸の加藤や酒井と並べてみると親子程も大きさが違います。HOナローのパイオニアであるエガーバーンの機関車も同様でして、今の目でみれば結構なオーバースケール。これで「HO」を名乗ったらその筋の方に…(以下略)

手頃な大きさは?

というわけで、技術その他の進歩により、1/87ファインスケールで加藤3トンDLだのニチユ2トンバテロコだのが走ってしまう時代。昔に比べれば夢の様ではありますが、一般レベルのモデラーには、もはやNゲージの小型機と変わらない大きさのHOナロー小型機の工作は難しい、あるいは出来るけどあまりやりたくないのではないでしょうか? また、Nゲージと変わらぬ大きさとなると、HOナローの魅力の一つであった「Nゲージの線路でHOが楽しめる」が希薄になってしまう気もします。このあたりで何となく不満が出ているんではないかなぁ…と想像している訳ですが、如何でしょうか?
まぁ、井笠や頚城などの比較的大きな機関車を使っているしっかりとした軽便や、近鉄特殊狭軌線や栃尾、下津井などの軽便電車だったら1/87でもそれなりの大きさなので、無理なく(?)楽しめると思うのでありますが…