軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

新装版・軽便探訪(新井清彦・著)


★今を去ること20年程前、機芸出版社より発行された「軽便探訪」が「新装版・軽便探訪」として復刊されました。
本書は新井清彦氏が1966年から1972年にかけて、日本各地の軽便鉄道モデラーとしての視点から撮影した写真と、構内配線図や実測データに基づく車輌の図面で構成された資料集。1994年から2003年にかけて鉄道模型趣味(TMS)誌に長期連載された同名の連載を単行本としてまとめた一冊です。

猫屋線ファンにおすすめ

★以前に「猫屋線でナロー鉄道模型に入門した人にオススメの一冊」という記事をアップしましたが、猫屋線などをキッカケにしてナローゲージモデルの世界に入門された方から「よい参考資料はないか?」とお尋ね頂くことがしばしばあります。
実はこの「軽便探訪」を強くお勧めしたかったのですが、売り切れになってから久しい上に、オークションでも高値を付けている状態が続いていて、残念ながら気軽にお勧めできる状態ではなかったのです。
ところが嬉しいことに約20年ぶりに復刊。しかも軽装版となった事で価格も大幅に求めやすくなり、さらには東洋活性白土専用線も追加。なんとも嬉しい限りであります。

多数の軽便を収録

★本書に収録されている路線は以下の通りです

本書巻頭の「はじめに」にて、著者の新井さんは以下のように記されています。

1966年から1972年からの5年間は、いま思い返しても、よく廻ったと思われるほどですが、この5年間が、軽便鉄道が最後の光芒を放った時代でした。幸運にも、その時に巡り会えたのです。

「最後の光芒を放った時代」というのはまさしくその通り。もし新井さんが廻るのが5年遅れたら、本書収録の軽便鉄道の大半は廃止されており、様々なタイプの軽便を記録することは出来なかったでしょう。
それにしても、愛車三菱コルト600で全国を回ったその熱意には敬服であります。あとがきでは鉄道を見に行くのに自動車で行くのは後ろめたかった旨が記されていますが、車の機動性があったからここまで撮影出来たのは間違いありません。
ちなみにコルト600、本書のあとがきに写真が掲載されていますが、本文中の駅前などの情景写真にも、まるでレイアウトに置かれたカーコレのごとくさりげなく写り込んでいたりします。

モデラー視点での内容

★前述の通り、新井さんが撮影され本書に収録されている写真は、車輌・情景共にモデラー視点によるもの。新井さんは鉄道模型趣味(TMS)誌1967年11月号(233号)にHOナローのフルスクラッチ作品「草軽のL電と貨車」を発表されていますが(のち「ナローゲージモデリング」に再録)、その記事によれば参考資料の少なさに困られた様子。
それがキッカケとなって各地に残る軽便鉄道を訪ねる旅が始まったそうですが、最初から車輌やレイアウトを製作するための資料として撮影されているがゆえに、我々ナローゲージモデラーにとって非常に参考になる写真の連続なのです。
また、カラー写真は35㎜ではなく中判カメラで撮影。現像先にも気を使われた様で、変色のない状態で本になった事も特筆せねばなりません。美しいカラーによる情景写真はレイアウトへの夢を掻き立てられます。
そして、本書は単なる写真集ではなく、構内配線図や車輌図面も収録。構内配線図は写真と合わせて見る事で駅構内の全体像を理解する事ができ、レイアウト製作の参考になりますし、車輌図面(1/45・1/64・1/80縮尺)は新井さんが実測された寸法を基にTMS編集部で作図された模型ファン向けの図面。実はこれらの図面を元に設計されたと思しき市販ナロー製品も多数ある位でして、当然ながら皆さんが車輌を作る場合に車輌細部写真と合わせて役立つことでしょう。

手元に備えておきたい一冊

★というわけで、日本型のナローゲージモデルを楽しむ方であれば、是非とも手元に備えて頂きたい一冊です。良い本は長く楽しめるし、参考資料として頼りになるのです。Webサイトのように、ある日突然“not found”で見れなくなったりすることもありません。
あなたの模型軽便鉄道を作るための参考に、この本で今は無き各地の軽便を探訪してみてはいかがでしょうか?

なお、一般書店には配本していないそうなので、モデルスIMONや書泉グランデなどの常備している模型店・書店で直接または通販で購入されるか、お近くの書店で取り寄せをお願いするのが良いかと思います(オンライン書店でも、取り寄せの上、近くの店舗での受取を指定できるものもある様です)。

新装版・軽便探訪
著者:新井清彦
発行:機芸出版社
2022年5月20日発行
定価3600円
ISBN978-4-905659-21-1