軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

TMS1980年4月号を読む

今日は20日ということで、TMS(鉄道模型趣味)4月号の発売日。今回掲載のナローレイアウト良いですね〜。
大熊さんの名鉄3400いもむし、池末さんのNゲージC58と車輌作品も力作揃い。広告を見ると学研がEF57、永大ナインがキハ40-2000、しなのマイクロは117系Nゲージ新製品目白押し。ナローでは乗工社の広告にSHAY生産中との文字が・・・
・・・あれれ、これは4月号は4月号でも、30年前の1980年4月号ではありませんか!
という訳で、今から丁度30年前のTMS1980年4月号を見ていきたいと思います。
★ナローファンにとってこの号は村瀬一男氏作のHOナロー9ミリレイアウト「思川鉄道」が掲載されているのが記憶に残る号。900×600というスペース*1に構築されたこのレイアウトは、高低差に富んだシーナリー、渋すぎず派手すぎずの色調で、山間を走る軽便鉄道の雰囲気を見事に再現しています。車輌もストラクチャーも自作(車輌は下回りにNゲージ製品を利用)ですが、それが全体のタッチを統一して好ましいものになっています。屋外の太陽光を照明に撮影された写真(筆者撮影)も、現代のデジタル画像に比べて鮮明ではないものの、逆に重厚感ある写真となっています。30年の月日を過ぎた今日の目で見ても見劣りしない作品であり記事であります。
★レイアウトはもう一つ、表紙にもなっている豊田氏のNゲージレイアウト「安朱鉄道」が掲載。2600×1200mmという大型のレイアウトで、まだ日本型ストラクチャーが少なかった時代だけに、海外製品も利用して市街地風景を作り上げています。なんというか、この時代のNゲージレイアウトの方が楽しい感じがするのは、単なるノスタルジーなのでしょうか?
★車輌作品では、大熊重男氏(近年もTMS誌上でちょくちょくペーパー電車を発表されていますね)の名鉄3400、東崎氏の京成3200と16番ペーパー自作による私鉄電車の記事が2本。私鉄電車といえばペーパー自作という時代で、私鉄電車の完成品やキット(除くペーパーキット)が各種出るようになるのはもっと後になってから。今ではカツミやエンドウが私鉄電車を発売しているのですから時代は変わったものです*2
Nゲージでは池末弘氏のC58が掲載されていますが、これはなんと全自作。この時代はまだC58はNゲージで製品化されていなかったのです。記事冒頭にある、戦時中に工作台と防空壕の間を何度も往復しつつ戦火を免れて完成させた16番ゲージC58が後年模型店の火事で焼失という話が悲しいです。
★その次のページは羽田二郎氏の「旧国・荷電・試験車を作る」という記事で、グリーンマックスのプラキットを使って身延線の4両編成やクモニ13、そして架線試験車クモヤ93を作られています。羽田氏はこの時代の常連執筆者であり、今のような細密化作品ではなく、まだ少なかった車種を増やすための工作記事がメイン。ベテランNゲージャーなら数々の記事をご記憶かと思います。
★「私の電車型運転台3種」は近年もたびたび執筆されている北原昭一氏による電車型コントローラーの発表記事。実車の廃車部品を使ったリアルな外観のトラコンです。今でこそKATOのECS-1のようなものがありますが、当時は自作するしかなく、運転台型コントローラーは多くのモデラーにとって夢でしかなかったのです。
★「製品の紹介」欄のトップは天賞堂日車標準タイプ電車岳南鉄道モハ1100系。同社発売のパワートラックWB-26Bを使用する前提のキットで、Hゴム窓がプラ成型品だったりと凝った設計。インパクトの強い製品でした。そもそも天賞堂の電車というのが珍しかった(それ以前では151系こだま型と小田急1600だけだったかと)のです。
同じく16番私鉄電車では、オリオンモデル製品(ムサシノモデル発売)の西武鉄道5000系レッドアローも掲載。輸出用製品を手掛けていたメーカーが発売した製品*3で、完成品4両1編成58000円なり。
★ストラクチャー関連ではエコーモデルの1/80軽便タイプ腕木式信号機が掲載。PECOのポイントマシンを取り付けて電動で動くというこの製品、今は絶版のようですが、この時代にこういうものが既に製品化されていたのです。子供には高価で買えませんでしたが(苦笑)
Nゲージでは関水金属(KATO)の201系。これは現在売られている量産型をプロトタイプにした製品が出る前の試作型900番台をプロトタイプにした製品。動力装置はこの製品用に新設計されたもので、この製品をもってKATOの電車用動力の基本構成が確立したのです。Nゲージでも窓から動力装置が見えないのは今や当たり前ですが、実はこの製品がその最初であり、当時は驚きをもって迎えられたのでした。
Nゲージ製品ではもう一つエポックメーキングな製品が掲載されています。トミー(TOMIX)のN自動車三菱ふそうバス、日産セドリック、いすゞエルフの三種で、Nゲージサイズの日本車としてはこれが初めて。当時のNゲージレイアウトファンにとってはカーコレが出た時は比較にならない程嬉しかったものです。それまではバイキングかバックマンの外国車を使うしかなかったのですから。
★山崎主筆による「ミキスト」欄では、2ページを費やして模型の写真の撮影法についてを解説。「以上はすべてコンテスト応募者のために述べたもので、”模型写真しろうと撮影法”のつもりである」と書かれています。レイアウトコンテストの応募写真にイマイチのものが多い為にこのような記事を書かれたのでありましょう。デジタルとなった今の時代向けのしろうと向け(これが肝心!)レイアウト写真撮影法も読みたいものであります。
★巻末の「編集者の手帖」では「昨年来、TMSの売行きは上昇を続けている」とあり、「本の雑誌」16号掲載の池袋:芳林堂書店1年間の「雑誌売行きベスト300」で、81位がアサヒカメラ、82位がTMSで、100位以内に鉄道ファン・鉄道ジャーナル、200〜300位に鉄道ピクトリアル・ラジコンマガジン・ホビージャパン・モデルアートが入っていたともあります。SLブームからブルトレブーム、そしてそれに付帯するNゲージブームを経て、TMSの発行部数が増え、今のように書店で普通に買える雑誌になっていったという事なのでありましょう。
★まだまだ書きたい事がありますが、今回はこの辺りにて・・・

*1:かの「祖師谷軽便鉄道」以来、900×600mmというこのサイズはナローレイアウトに良く用いられていました。当時としてはこのスペースはコンパクトであるとされていました。

*2:KATOやTOMIXがプラHOに進出した為、カツミやエンドウは高額なブラスでも熱心なファンが買ってくれる私鉄にシフトしたのかも・・・

*3:この製品の製造元のオリオンモデルは立川にあった城山模型とも関係が深かったとか…。学生時代に城山模型でバイトしていた家元に伺いました。