軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

エガーバーン5号機の思い出


★既にご承知の通り(ご承知で無かったらこちらをご覧あれ)エガーバーン5号機がミニトレインズより「クラウス」として復刻される事となりました。
エガーバーン5号機の思い出といっても、大先輩方とは異なり「三越エガーバーンを買いに行った」*1とか「軽便鉄道同好会*2の会合で走らせた」という様な軽便鉄模創世記の思い出はないのでありますが、それでも冷静になってみれば、ワタシがエガーバーン5号機を初めて見たのは既に30年近い昔の話…という訳でこの機会に記してみることにしましょう。
★ワタシがナローを始めたのは1983年の事でありますが、その頃の日本のナロー界はまさに暗黒時代。乗工社は国内向け製品供給を中止、その他のメーカーも殆ど製品を供給しておらず、模型店に売れ残った製品を探すしかなかった時代でした。自作するにも使えそうな動力は僅かにKATOポケットライン位という有様。当時高校生だったワタシは遅く生まれた身の不幸を呪ったものです。
★神田の古本屋街を歩き回って「ナローゲージモデリング」をようやく入手したのもこの頃*3。1960年代末から1970年代初頭のTMS誌のナロー関連記事をまとめたこの本を読み、エガーバーンというものの存在を知ったのです。エガーバーンというのは西ドイツ製の模型で、HOナロー9mmのパイオニアであること。デパートで売っていたこと。しかしエガーは倒産し、フランスのジューフに引き継がれた事…。その製品群は非常に魅力的でしたが、当時はどこにも売ってはいませんでした。今だったら中古店やネットオークションがありますが、当時は中古模型店は今ほどメジャーではなく*4、ネットオークションなど影も形もありません。記事の写真を「いいないいな」と言いつつ眺めるしかなかったのです。
★そんなある日、本屋で立ち読みしたとれいん誌の広告に「エガーバーン」の文字があるのを発見。エガーバーンが久々に再生産され、外国型専門店のチムニーに入荷したのでした(多分、1970年代初頭以降再生産されていなかったのではないでしょうか?)。広告を見ると、4号機(ワークカー)、5号機(クラウスタイプ)、9号機(ウェスタンテンダー)の機関車と客貨車のセットが入荷した模様。ワタシが欲しかったのは青色のクラウスタイプの5号機でした。
チムニーは現在も盛業中ですが、当時は渋谷のNHK放送センターの前に店があった頃*5。店の中に入った事はありませんでしたが場所は知っていたので、さっそくお小遣い片手に渋谷に向かったのです。とはいっても、高校生には電車賃すら惜しいので、10キロ近い距離をキコキコ自転車を漕いで渋谷のチムニーへ。到着すると店頭のウィンドウにはジューフ・エガーバーンのセットが飾られています。それがワタシがエガーバーンという物をこの目で見た最初の瞬間でした。
★期待で胸を膨らませながらチムニーの店内へ入り、店主のおじさんに「エガーバーン5号機はありますか?」と尋ねます。おじさんは棚からエガーバーンのセットの箱を取り出しました。5号機と客車3両、それに線路の入ったセットです。金額がいくらだったかは記憶が定かではありませんが、確か1万円前後だったでしょうか。用意したお小遣い(=当時のワタシの全財産)を超える額でした。
実は広告にはセットしか出ていなかったのですが、機関車単品もあるだろうと勝手に思っていたのです。機関車だけならセット程高くないので何とか買える筈だったのですが、それは甘い考え。おじさんに聞いたところ、セットしか存在しないとの事だったのです。
チムニーのおじさんが手にしているエガーバーン5号機の入ったセット、それを手に入れるお金はワタシには無かったのです。憧れのエガーバーンを目の前にしたのに、結局手に入れる事は出来ませんでした。
ガックリしながらチムニーを出て、再び自転車をこいで家路につきました。井の頭通りを通って帰ったのですが、夕日に照らされながら登った渋谷から代々木上原に向かう坂道が、何と急に感じられた事か!
★その後、1990年代前半にジューフはエガーバーンをもう一度再生産。この時はモデルバーンのTMSなどの広告に大きく出ていたので、ご記憶の方も多いでしょう(この時はセットだけでなく機関車単品でも販売されました)。この頃は既に社会人になっていたので、恵比寿のモデルバーンで購入する事が出来ました。いやぁ嬉しかったですよ。大事に包みを抱えて帰ったのを昨日の事の様に思いだしますが、よく考えてみればそれも20年近く前でありますな。
★というわけで、気が付けばすっかり中年親爺になり果てたワタシの前に、今度は「クラウス」と名を変えてエガーバーン5号機は帰ってきた訳です。早く日本に入荷しないかなぁ〜と、ミニトレインズのWebサイトを眺めつつ期待する今日この頃なのであります。

*1:当時、デパートの模型売り場では外国製鉄道模型をよく扱っており、エガーバーンもデパート中心で売られていたとの事。

*2:「祖師谷軽便鉄道」の橋本真氏が中心となって結成されたナロー専門のクラブで1960年代後半〜1970年代初期に活動

*3:この後、1990年頃に再販されるのですが。実はこの頃はナロー製品だけでなく、ナロー関連書籍も多くが姿を消していた頃でありました。

*4:一応、中古を扱う店はありましたが、その数は少なく、かつ新品販売のついでに中古を多少並べている…という程度でした

*5:最初の頃は外国型専門ではなかった様で、通りの面したウィンドウの中にひかり模型の1/80ナローの貨車キットが随分長く売れ残っていたのを覚えています。その後渋谷から阿佐ヶ谷へ移転し、さらに青山へ。今は二代目の店主の方が引き継がれているとの事。