軽便鉄模アンテナ雑記帳

軽便鉄模アンテナ管理人(うかい)の雑記帳です。ナローゲージ鉄道模型の話題が主

レイアウトと16番/Nゲージ

先日、コンさんが興味深い事を書かれていました。

該当記事にコメントさせて頂こうかと思ったのですが、コメント欄が荒れてもナンですし、こちらでネタにさせて頂きましょう。
★日本における16.5mmゲージが、その当初からレイアウトを目標としていた事は、戦前〜戦後の模型雑誌の記事、パイオニアであった人達が書き残した文章を見れば明確であります。また、9mmゲージ=Nゲージも同様かそれ以上にレイアウトを前提にしており、「車両は買うもの」という思想も徹底されていました(日本におけるパイオニアである関水金属=KATOは最初から塗装済み完成品オンリーの製品展開でした)。この辺りはコンさんの書かれている事に異はありません。
★ですが「レイアウトを作る為のゲージだから多少ガニマタでも」という発想では決してなかったと思います。とかくガニマタ・ガニマタとおっしゃいますが(事実日本型サブロクの蒸機を作るとガニマタですが)、根底にあるのはイギリスの車両も、アメリカの車両も、日本の車両も、満鉄や鮮鉄といった「外地」の車両も、そして当時はまだ姿を現していなかった広軌新幹線も、同じ線路で仲良く走らせたい…という想いでしょう。
いわゆる16番…イギリス型は1/76、アメリカ型は1/87、日本型を1/80で作って、16.5mmで走らす…の発想は、そもそも日本の0番ゲージ(Oゲージ)が元になっています。昭和13年に雑誌「模型鐵道」誌に掲載された「模型鉄道の標準軌間」という湯山一郎氏による記事でアメリカ型は1/4インチスケール(1/48)、イギリス型は7mmスケール(1/43.5)、それに対して日本型は1/45で作る…という提唱がなされています*1
つまり、0番の発想(模型鉄道標準軌間論)をより小さい16番に当てはめ、さらに小さいNゲージに当てはめた訳であって、レイアウト云々とは直接関係ないと思います。
★あと余談になりますが、戦後に赤井哲朗氏が「あれほどゲージ論が模型誌上を賑わせ乍ら、遂にナローゲージの事を書いた人が現れなかったこと。」*2と述べておられます。戦前0番や16番を批判した側の人達であっても、実物に合わせて複数の軌間を使い分ける…という発想が無かったのでは?とも思えます。つまり1/30 35mmはあっても、1/30 41mmや1/30 25mmゲージという発想はなく、実物の軌間に関わらず全て35mmの線路を走らせようとしていたのではないかという事です。
★レイアウトについて言えば、表現を突き詰めていくと、やはり1067mmゲージの線路は12mmや13mmといったファインスケールでやりたいよね…と考える様になってもおかしくないと思います。しばしば「HOクラスの大きさだと作り込みが出来る」と言われますが、作り込めば作り込む程、1/80 16.5mmだと線路周りが「あれれ?」となってしまうのも否めないかと。車両におけるガニマタ感解消の為でなく、サブロク私鉄の線路の実感を求めて、12mmでレイアウトを作る…という人がいても良いと思うのですよ。
★コンさん的には、昔の「三津根鉄道」などの16番レイアウトが忘れられなくて、だからNでも13mmでもなく、「16番」でレイアウトを含めてやりたいのだろうなぁ〜と勝手に想像しております。Bタンクの走る16番小型レイアウト、それはある意味見果てぬ夢なのかもしれません。

*1:犬走志ん3号「湯山一郎氏にきく」による

*2:鉄道模型趣味57号「ナローゲージモデルについて」後に高級モデルノートに再録